高松市三谷町・実相寺に眠る勝姫 ― 生駒家の悲しい姫物語を訪ねて

勝姫の墓 さぬき歴史物語
勝姫の眠るお墓
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三谷町の日山ふもとにある小さな寺

高松市三谷町、日山のふもとにひっそり佇む「実相寺」。
こぢんまりとしたお寺ですが、手入れが行き届いていてとてもきれい。
秋には銀杏や紅葉が色づき、歴史に触れるだけでなく四季の彩りを楽しめるスポットです。

そんな実相寺に眠っているのが、かつて高松藩主の正室だった勝姫です。

勝姫と生駒家の数奇な運命

勝姫の父は、江戸幕府初期に絶大な力を誇った老中・土井利勝。
名門の娘として、わずか15歳で生駒高俊のもとへ嫁ぎました。
この結婚は、幕府と高松藩のつながりを強めるための政略結婚でもありました。

しかし夫の高俊は「生駒踊り」と呼ばれる美少年を集めて舞わせる遊興に夢中。
夫婦仲は深まらず、勝姫は子宝にも恵まれませんでした。

生駒踊りとして全国に名が知られた

結婚から12年後、勝姫は病に倒れ、若くして亡くなります。
まだ20代半ばから後半と見られる年齢で、あまりにも短い人生でした。

高松市街三番丁にあった法昌寺のお墓に弔われました。

改易と姉妹の縁

勝姫の死後、生駒家は幕府から改易を命じられ、秋田へ転封。

勝姫は寺(実相寺)のお墓に独り残されてしまいました。

しかし、数奇な運というものか。
その後に入封した松平頼重(水戸黄門の兄)の正室「万姫」は、なんと勝姫の妹。
偶然にも、姉妹が同じ高松に縁を持つことになったのです。

近くに眠る姉妹の墓

時を経て。

実相寺は昭和期に現在の三谷町へ移転。
その場所は偶然にも、妹・万姫が眠る法然寺のすぐ近く。
離ればなれだった姉妹の墓が、いまはほど近くで静かに並び立っています。

実相寺を歩いてみて

境内は小さいながらも清々しい空気に満ちていて、秋には色づいた銀杏や紅葉が映えます。
墓前に立つと、短い生涯を終えた勝姫の孤独や、数奇な運命に思いを馳せずにはいられません。
観光地として賑やかな場所ではありませんが、歴史好きにとってはじっくり時間をかけて歩きたい場所です。

アクセス情報

  • 住所:香川県高松市三谷町(※日山のふもと)
  • 交通手段
    ・JR高徳線「屋島駅」から車で約15分
    ・ことでん長尾線「木太東口駅」から車で約10分
    ・高松駅から車で約25分
  • 駐車場:境内横に小さな駐車スペースあり(数台程度)
  • 周辺スポット
    ・妹・万姫が眠る「法然寺」まで車で約5分
    ・日山登山口も近く、歴史と自然をあわせて散策できます

補足:生駒踊りってなに?

「生駒踊り」とは、高松藩主・生駒高俊がはじめた遊びで、美少年にきらびやかな衣装を着せて歌や舞を踊らせたものと伝わります。
今でいえば、殿様が専属アイドルグループに夢中になっていたようなイメージです。

評判は江戸や京にまで広まるほどでしたが、高俊は踊りにのめり込みすぎて、家庭だけでなく藩政(政治)も顧みなかったといわれます。
その姿勢が生駒家の不安定さを招き、やがて改易につながったとも考えられています。